交差対句法的アポリアとしての未来性

すでにid:shintakさんがご自身でお書きになっているが、昨夜のセミナーは氏の最近の主要概念である系譜学的「未来性」――先週のtakashimuraさんの場合であれば「交渉」ということになるが――のさらなる「練り上げ」の機会になったようだ。金曜は昼休みと3・4時限が空いているのでその間にハーマッハ本の読了というつもりであったが、卒論の相談でゼミの学生が数名やってきて、相談それ自体は終わったのになんだか腰が重くなったというか小生の研究室が居心地がよいのか「もうすこし滞在させてください」ということになりずっと世間話という次第に、つまりはハーマッハ本の残り3分の1は未読のままでお茶の水に行くことに。したがってその限りの理解で申せば、昨夜のレクチャーにおける「未来性」の解釈として、ベンヤミンの最悪の可能性としての「メシア的テロス」に繋がらないのはもちろんであるが、いわば未来であると同時に過去であり/ない、過去であると同時に未来である/ない、というようなハーマッハ流の交差対句法的アポリア=ディアポリアを生きるものであって、それを「否定性」という水準でいえばムフ=ラクラウ風の「空虚」であるからこそ永続的に政治を喚起する契機となる・・・といった単純な否定神学的/超越論的肯定性を帯びるものではなく、むしろ否定の否定が単なる肯定性に至らないような超・超越論性とも呼びうる領野ではないか、とか思ったり。その意味で会場でも質問があったが、反復、外傷、事後性という概念系との繋がりとかは?とかいう問いもあり得るだろう。系譜学的な事後性ということが「未来性」の練り上げにどの程度貢献するのかはよくわからないが。ただハーマッハの読みが十分でないので覚書程度。こういった話への応答として、具体例をたとえば文学作品の解釈としてはどうなるのか・・・みたいな質問は「ちがう」と思った(陽水=明菜)。文学の解釈をより豊かにするメタ言語としての理論という話をしたがる方々には、ド・マンの「理論への抵抗」をmustの文献として挙げておきたい。

その後はこれもshintakさんのご報告のような仕儀に。この前も書いたようにここの方々とは話があう。そして歌唱へ。狂乱するS木先生と陶然たるshintak先生の濃密なデュエットで切々と歌い上げられた『雪の華』のホモソーシャルホモセクシュアル的強度/濃度に打ちのめされた小生は、せめても応戦として辛島美登里の『サイレント・イヴ』を選曲。クイア性において完敗=乾杯・・・

という次第でいささかの二日酔いのまま仕事部屋の掃除と整理整頓。さてさてこれから同人誌の原稿を書き始めるか。

追記:同人誌論文どうにか書き出す。

追記2(掲示板として):丹治会長から次のようなメッセージが大会関係者向けにファイルで来ました。事の性質上ここでもお知らせするべきでしょう:

新型インフルエンザ問題

 日本英文学会第81回全国大会(於 東京大学駒場キャンパス)が1週間後に迫ってまいりました。心配は新型インフルエンザの拡大です。東京にも患者が出はじめているという現在の状況です。
 東京大学では、新型インフルエンザの拡大しだいでは、「休校措置を含め必要な措置」をとるとしております。学生間の感染が確認されると、休校措置をとらざるをえないのではないかと思いますが、休校措置がとられた場合は、キャンパスを封鎖するため、全国大会は延期ないし中止に追いこまれます。延期か中止かの判断は、そのときになってから理事会において検討することにしますが、いつになれば新型インフルエンザ問題が解消するのかわからないうえに、全国大会規模での教室確保が困難という面から中止になる確率が高いのではないかと恐れております。
 キャンパス封鎖という事態にならないかぎり、理事会ならびに大会準備委員会としては全国大会を開催することに決めています。新型インフルエンザが弱毒性でありタミフルなどの薬が有効であること、それ以上に、会員にとって、とくにこれまで長期間準備をつづけてきた研究発表予定者にとって、全国大会が就職・昇任などさまざまな意味で重要な意味をもっていることを考慮しました。
 しかしその一方で、当然のことながら、全国から多数の会員が集まる全国大会が感染の場となることを恐れています。弱毒性とはいっても、糖尿病などの慢性の病気をお持ちの方や妊娠中の方にとっては、重症化の危険も指摘されております。そのような方は参加を自粛していただくのがいいのではないかと思いますし、シンポジウムをふくめ研究発表者のなかで参加を見合わせたいという方がおられる場合は、『大会プロシーディングズ』に投稿する権利を保持したまま参加を見合わせる権利を認めるべきであろうと判断しております。
 したがって、全国大会のプログラムに変更がありうることについてあらかじめご了承を求めたいと思います。また、参加を見合わせる研究発表者の方には、その旨をなるべく早くに(遅くても29日(金)午前10時までに)事務局全国大会担当宛(etaikai@elsj.org; ejimu@elsj.org; kaz@lit.nagoya-u.ac.jp )にご報告いただきますよう、お願いするしだいです。プログラムの変更は、29日(金)に学会ホームページに掲載したいと思います。
 また、学会に参加される方については、感染の確率をできるかぎり小さくするために、体温の確認、マスクの着用、うがいや手洗いの励行など、個人個人の努力をよろしくお願いいたします。東京大学のホームページには、「学外からの来訪者の方にも、発熱のある場合は入構を遠慮いただくようお願いします」と書かれております。ご協力のほどよろしくお願い申しあげます。
 懇親会については、人混みになるだろうこと、飲食のためにはマスクをはずす必要があること、研究発表とくらべて重要性が低いこと、中止の場合は理由のいかんを問わずキャンセル料が発生することなどを考慮し、キャンセル料が発生するぎりぎりの時点で中止を決定しました。ご了承ください。参加申込を済ませている方への懇親会費返金の方法については別途個別にご連絡いたします。

 以上、現時点における理事会ならびに大会準備委員会の考えをご報告させていただきました。今後、東京におけるインフルエンザの動向に応じて、さまざまな措置が必要になってくると思います。それについては随時、学会ホームページでご報告していきたいと思いますので、適宜ご確認のほどよろしくお願い申しあげるしだいです。
 全国大会中止という異例の事態も予想されますが、その場合も『大会プロシーディングズ』の増ページなどをつうじて、会員、とくに研究発表予定者の不都合をできるだけ少なくする方策を検討したいと考えております。ご理解のほどよろしくお願い申しあげます。

    平成21年5月23日
    日本英文学会会長  丹治 愛