なんと

Institute of Psychoanalysisでの昨日のリサーチではA.A.BrillとErnest Jonesの往復書簡を1940年代まで読んできたが、格別の収穫はなし。まあBrillというのは、フロイトの最初の英訳者ということで歴史に名を刻む人ではあるが、その翻訳がその後の厳密かつ高水準のRiviereやStracheyの英訳(例のStandard Edition)と比較するとかなり恣意的で間違いがあることも同時に知られている。書簡にもその事実が如実で、このBrillというひと、やたら卑屈な感じである。どうせぼくのtranslationについてはProfessor(=Freud)は評価していないから......みたいな言葉が出てくる。一方で、JonesとFreudは商魂たくましいわけで、精神分析を世界に布教するmissionのためには野蛮国アメリカで相対的に聡明なBrillを手放すことができない。ということでJonesの文章を読んでいると、この人本当に性格悪いなあ、しかしこういうやつがいたおかげで精神分析は20世紀を制覇できたのかなあ、というような凡庸な印象が収穫にもならない収穫であって、まあ精神分析の歴史に関する二次資料レヴェルの感慨にすぎない。

昨日のエントリーで触れたJames Stracheyの手書きの書簡、アーカイヴィストのお姉さんにphotocopyをお願いしておいたら、たった1ポンドのお代だった。まあ便せん2枚程度なんだけれども、これはかなり安いし早い。ここのInsititutionの図書館はあまり人が来ないし、まあ鷹揚なのだろう。そういえばアーカイヴを読む部屋には誰もいないし、悪いことをしようと思えばできてしまう感じで、BLとかWellcomeの図書館とはぜんぜんちがう。

という次第でInstitute of Psychoanalysisでのこの夏の作戦はいちおう終了ということで、今日はBLにてメモった資料の整理とかそれをふまえたアイディアの文章化の作業をしようと、Humanitiesのreading roomに入るためにカードを提示したら、係のおじさんに足止めされる。なんと、なんと、カードの期限が2011年2月でexpireしていることに気がついていなかった!!なんというおバカな。しばらく研究とはほど遠い生活をしていたからこんなことになるのか。思えば今年の3月にはこのBLのアーカイヴを読むことを中心としたリサーチを計画していたのだが、例の震災で急遽中止したのは不幸中の幸いであったのか。

しかし、まあ、今日の作業はreading roomを必ずしも必要としないので、玄関正面のエスカレーターを上がったあたりのプラグがついた椅子を確保して作業をすることに。もし同業者がBLに来たら必ず見つかる場所であるなあ。ともかく開館の9時半に来てよかった。この場所はすぐに埋まるから。カードの更新は来年ロンドンに来てからにしよう。こちらのaffiliationがあったほうが話が早いから。

追記:結局朝の10時前から現在(午後4時)くらいまで書き物の仕事。不思議なことにreading roomでやるよりもはかどる感じだ。目の前を人がしょっちゅう通り適度なノイズがあるのがいいのか。