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ご献本いただきました。
ポストコロニアルがポスコロへと制度化するなか、強力な介入の書であることは間違いない。小平方面の研究成果であるが、吉祥寺で類似の形態の研究プロジェクトで論集を出す予定なので大いに参考かつ刺激になる:
- 作者: 秦邦生,富山太佳夫,溝口昭子,早川敦子,中井亜佐子
- 出版社/メーカー: 英宝社
- 発売日: 2012/03
- メディア: 単行本
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タイトルもカッコいいなあ。Sさん、N井さん、M田さん、Nさん、ありがとうございました。
類似の吉祥寺の研究プロジェクトの宣伝もではここで:
成蹊大学アジア太平洋研究センター共同研究プロジェクト「近代『日本』の表象形成と環太平洋の地政学」2011年度第2回研究会
2012年3月18日(日)アジア太平洋研究センター会議室(一号館三階)15:00-16:30
ヘネモコパラからコンラッドまで―海洋と「近代日本」の英米文学受容
(講師:脇田裕正・都留文科大学講師)17:00-18:30
曖昧な日本の「私」―私小説とアメリカ南部文学
(講師:後藤和彦・立教大学教授)
脇田裕正 英文学・比較海洋文学。都留文科大学講師。
安政二年、咸臨丸によるアメリカへの渡航を『福翁自伝』では「日本開闢以来初めての大事業」と述べているが、この時乗船したアメリカ人「カプテン・ブルック」(Lieutenant John Mercer Brook, 1826-1906)について福沢は「太平洋の海底測量」を目的とした「小帆前船ヘネモコパラ号」の船長だったと回想している。福沢が言う「小帆前船ヘネモコパラ号」とは、Feminore Cooper号のことを指している。この船名はアメリカの海洋文学のパイオニアだった作家のJames Fenimore Cooperから取られている。東から西へと領土を拡張し、さらには海洋にまで拡張する「アメリカ」の姿を描くCooperの文学、そして太平洋の詳細な海図の作成に従事することでその拡張の一翼を実際に担い続けた「ヘネモコパラ号」。この二つの「ヘネモコパラ」は、「アメリカ」にとって、海洋が、とりわけ日本近海を含む太平洋が、いかに重要な空間=領域であったのかを示唆している。
ヘネモコパラ号は測量調査の途中、暴風のために横浜港で座礁しその役目を終える事になる。これは幕末の日本にまだ読まれたことがないアメリカの小説家の名前だけが到達していたと言えるかもしれないが、もちろん明治以降、多種多様な欧米(特にイギリスとアメリカ)の海洋文学を日本は受容し続けてきた。その影響力は強く、1940年前後の段階でも、教科書や雑誌などに掲載される海洋文学の多くはコンラッドを中心とした翻訳作品で占められている。造船技術から航海術まで、欧米の技術を積極的に取り入れ近代化に邁進した結果、日本はイギリス、アメリカに次ぐ規模の海軍を擁し、また地政学的な観点から海洋権益の重要性は盛んに論じられてきた。ところがそれにも関わらず、明治から太平洋戦争敗戦まで、常に日本独自の海洋文学の欠如が指摘され、その必要性が叫ばれ続けてきたのである。
いったい近代日本において、アメリカのように自国の艦船にその名を付ける程の重要な海洋文学者を生み出したのだろうか。いったい日本独自の海洋文学とは何か。今回の発表では、1940年代前後の日本の海洋観と海洋文学について考えていきたい。具体的には
1)1941年に制定された「海の記念日」に関する文学者たちの言説。
2)太平洋戦争勃発時の文学者(英米文学者を含む)たちの海洋に関する言説分析。
3)40年代の日本の英米文学者たちの海洋文学に関する言説。
この三つの項目に焦点を当てることによって、日本の海洋文学の特徴の一端を明らかにしていきたい。後藤和彦 アメリカ文学。立教大学文学部教授。九州大学文学部卒業・東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。東京女子大学文理学部専任講師、立教大学文学部助教授を経て、現在に至る。
アメリカ南部の異端性は建国以来つねづね外部の批判の対象とされてきたので、南部の文学者は生まれた土地を擁護するか、その悪を認めて外の人間よりもっと辛辣に批判するか、そのいずれかとならざるを得ない―といったのはFred HobsonのTell About the South: The Southern Rage to Explain (1983)である。勢い南部文学には自伝的傾向が色濃く、「私」と故郷との一体性が自然な前提となっているようだ。一方、日本独特の文学形式といわれる「私小説」はどうか。それは日本近代文学黎明期にあって、そもそも故郷からの離別ないし「家」からの精神的独立、つまりみずからの出自の否定を第一の眼目とした文学のように見える。日本の「私」とは何なのか、日本の「私」は何を明かし、何を隠す工夫なのか、日本の「私」はいったいどこにいるのか―。
関心のあるかたはどなたでもご来場を歓迎いたします。
会場整理の都合上、前日までに以下のメールアドレスにご連絡ください。
hibinoアットマークfh.seikei.ac.jp(日比野)近代「日本」の表象形成と環太平洋の地政学
プロジェクトリーダー:遠藤不比人[成蹊大学]
研究分担者:日比野啓[成蹊大学]・斉藤一[筑波大学]