微温的な環境でBionは不勉強でして

昨日は17:00までBLでAlixと仲良く。この時間でarchiveの部屋は閉まるので18:00からのseminarまでUCLの例のcommon roomでメールの返事などをして、定刻の5分前くらいにRussell Square 30の教室へ。聴衆は60人程度か。Bionについては基礎知識もないのでただ拝聴という形に。Bionのpsychoanalysisと同時代のphysicsとかmathematicsの関連とか、Freudがpsychanalysisのfoundationを築き、Kleinがchild analysisの可能性を拡大したのならば、Bionはpsychosisの治療でbreak-throughをもたらしたのだとか、psychosisの一つの特徴としてrealityの拒否ということがあるのだが、その背景にはto know somethingに伴うfrustrationを耐えられないこと(つまりunknowabilityをtolerateできないということ)があるのだとか、ふむふむと勉強をする。最後の話の背景には当然、Freud/Klein的なinfantile sexual theoryが前提となっている訳だが。聴衆の方々けっこう素人っぽい質問ばかりなので、厚顔無恥な小生も質問をしようかと思ったのだが(たとえば先日Becketを分析したBionについてT尻さんに質問されて答えられなかったので、Ronもこの件にはちょっと触れていたので、この点について質問をしようかと思ったのだが)日本の微温的な環境でBionは本当に不勉強なので、やはりやめておく。

seminarが終わるとDeeが「忙しい?ちょっとどこかでお話をしていく?」とおっしゃるので、この前にSonuさんたちと行ったLeigh Streetのpubへ行く。ここはちょっと奥まったところにあって比較的に静かなので。ということでRussell Square 30からEliotのFaber & Faberがあったところを通り過ぎ、Tavistock Squareを抜けて、このpubまでDeeとJames/Alixのことを熱心に語りながら歩いていると、なんだか1920年代、30年代のイギリスの文化研究をする場所としてこんなにも理想的なところはないと、あらためて感慨が深い(あたかもイギリスやアメリカの日本文学の研究者で永井荷風の専門家が、隅田川沿いを歩きながら抱くであろう感慨と似たものがあるだろう、ってちょっと変な比喩だけれども)。そのpubで20:00過ぎから22:30くらいまでいろいろとお話をする。彼女は学部は歴史を専攻し、Psychoanalysis UnitでMAをやり、いまは継続してPhDという経歴で、また週に何回かKleinianに分析も受けている、という話も詳しく聞く。PhDではJames Stracheyのbiographical studyということで、例のMichael HolroydのLytton Stracheyに関するcritical biographyに強く影響を受けているということなので、それはぜひbook formでpublishするべきだと言ったら、そのつもりだという答え。実際に出版されたらこれはBritish modernity研究のひとつの空白が埋まることになる。

なかなか刺激的で楽しい時間を過ごしたわけだが、このブログは恥ずかしいこともあらいざらい露悪的に告白することになっているので、告白するとDeeの英語、とてつもなく神経症的に早口でときどきfollowできなくなってしまう。これまでeducated accentのイギリス語のネイティヴと対座して(パブでは外の席が空いていた)共通の話題を語ってそれほど聞き取りに苦労したことはないのだが(といって小生の英語耳はかなり軟弱ではある)。non-nativeの小生なのになんだか仮借なきmachine-gun British Englishという感じだ。かなり口語的な表現も多用している(メールの英語を読むのにときどき『リーダーズ英和大辞典』を引いてしまう(笑))。まあ毎日彼女とお話をしていれば慣れるのだろうが。そういえば10年まえにTodd Defresne (みすずで翻訳をした)もほとんど神経症的に早口だったなあ。といいながらけっこう激論をしたのだけれども。

といいながらこの季節のロンドンで20:00から22:00過ぎまで天気の良いときにパブの外側のテーブルで共通の話題で盛り上がるというのはかなり特権的な経験ではある(いまロンドンの日没は22:00過ぎ)。Deeと分かれた後でパブでは食事をしなかったので空腹に。これから自炊というわけにもいかないので、近所の中華で軽めに。75点という感じ(小生、ポスト・バブルの東京で、とくにイタリアンと中華に関しては贅沢の限りを尽くしたので、ロンドンの中華もイタリアンもしんどい)。

今日は9:30からBLにてふたたびAlixとデート。15:00くらいにいちおう当面のarchive方面作戦が終了する。そろそろ原稿を書く直接的な準備をしようか。